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お悩み相談室

過重労働対策について

(1) 現状を知ろう。

厚労省では、平成14年2月に「過重労働による健康障害防止のための総合対策」を策定し(平成18年3月に全面改定)、時間外・休日労働の削減などとともに、一定時間以上の時間外・休日労働を行わせた場合の健康管理措置の徹底について周知を図っています。過重労働による健康障害を防止するため、平成16年6月に、労働者による自己診断チェックリスト及びご家族により労働者の疲労蓄積度を判定できるチェックリストを作成し、公表しています。

まずは、過重労働(疲労蓄積度)をセルフチェックし、現状をしっかり把握しましょう。(出典:中央労働災害防止協会)
注)労務担当は、気になる従業員を想定してチェックしてください。
http://www.jaish.gr.jp/td_chk/tdchk_menu.html


(2) リスクを知ろう。

いかがでしたか?

過重労働は、健康障害に直結する問題です。

時間外・休日労働時間(※1)と健康障害の間には医学的に相関があるとされています。

具体的には、時間外・休日労働時間が月45時間以内であれば健康障害のリスクは「低く」、その時間が長くなる程にリスクが徐々に高まります。

そして、月100時間を超える、または、2~6月の平均で月80時間を超える(※2)と健康障害のリスクが「高」とされています。


 健康障害のリスクを防止するためには、時間外・休日労働時間の削減、年次有給休暇の取得の促進、事業場における健康管理体制の整備、健康診断の実施など、労働者の健康管理に関する具体的な措置を行うことがなにより重要です。

また、やむを得ず長時間にわたって時間外・休日労働をさせた労働者には、面接指導を実施して、適切な事後措置を講じてください。

※1 「時間外・休日労働時間」とは、休憩時間を除いて、1週間当たり40時間を超えて労働させた場合における、その超えた時間を指します。

※2 「2~6月の平均で月80時間を超える」とは、過去2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月のいずれかの平均の月平均の時間外・休日労働時間が80時間を超えることを指します。


(3)具体的にはどうしたらいいでしょう?

①時間外・休日労働時間を削減しよう。

(ア) 36協定は限度基準等に適合したものとなっていますか?
36協定(時間労働・休日労働に関する協定)で定める延長時間については、限度時間が定められています。

限度時間は、一般的には、1ヶ月であれば月の時間外労働時間は45時間、1年であれば360時間までとされています。

貴社の現状と36協定で定めた限度時間が合っていない場合は早急に見直す必要があります。

ぜひ、ご相談ください。

(イ) 労働時間を適切に管理していますか?
労働時間を適切に管理するためには、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録する必要があります。

(ウ) 年次有給休暇の取得を促進していますか?
上長自らが率先して、取得しやすい職場環境をつくっていくことが重要です。

しっかり働き、しっかり休養を取ることで事業場の労働生産性を高めていきましょう。

有給休暇が思うように消化できていない事業場は、計画的付与制度の利用なども検討しましょう。

(エ) 労働時間等の設定の改善のための措置を実施していますか?
労働時間設定改善指針(平成20年厚生労働省告示第108号)に基づき、必要な措置を講じましょう。
指針はこちら
 http://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/jikan/dl//honbun.pdf


②健康管理体制の整備・健康診断の実施を図りましょう。

(ア) 産業医、衛生管理者等を専任していますか?
産業医を選任する義務がない事業場(常時50人未満の労働者を使用する事業場)では、地域産業保険センターの産業保険サービスを活用しましょう。

(イ) 衛生委員会等を設置していますか?
衛生委員会等を設置して、「長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること」をはじめ、健康管理について適切に調査・審議を行いましょう。

常時50人以上の労働者を雇用する事業場では、「衛生委員会」の設置が義務となっています。

また、その人数未満の事業場では、安全面や衛生面に関する事項について、「関係労働者の意見を聴く機会」を設けるようにしなければなりません。

(ウ) 健康診断を確実に実施していますか?
使用者は、労働安全衛生法により、労働者に対して、1年以内に1回、定期健康診断を実施しなければなりません。

また、深夜業を含む業務に常時従事する労働者に対しては、6ヶ月以内に1回、特定業務従事者健康診断を実施しなければなりません。

(エ) 健康診断結果に基づく適切な事後措置を実施していますか?
健康診断の結果、有所見者については、健康保持のため必要な措置についての医師の意見を聴いて、必要な事後措置を講じなければなりません。


③長時間労働者に対して面接指導等を実施しましょう。

(ア) 医師による面接指導の対象者とは?
「時間外・休日労働時間が、1ヶ月あたり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者(労働者の申し出による)は、医師による面接指導を実施しなければなりません。

また、実施した医師から必要な措置にについて、意見聴取を行い、必要と認める場合は、適切な事後措置を実施しなければなりません。

(イ) 面接指導の対象者以外の者に対しては?
③(ア) に準ずる措置を行いましょう。

例えば、保健師等による保健指導を行う、疲労蓄積度を把握して必要な労働者には面接指導を行う、事業者が産業医等から事業場の健康管理について助言指導を受ける、などが考えられます。

面接指導の対象者以外の者に対しては、事業者の義務ではありませんが、労働者の健康管理のために積極的に実施したいものです。

解雇について

(1) 解雇とは?
解雇とは、使用者が一方的に労働契約を解約することをいいます。

解雇は労働者の生活はもちろんのこと、精神面にも大きな打撃を与えてしまうことから、法は様々な制限を設けています。

ここでは、解雇する前に知っておくべき規制の中身と、典型的なトラブル事例を紹介します。

事例を参考にして、もしも解雇せざるを得ない場面であっても、後々に解雇トラブルで裁判に発展しないようにしましょう。

(2) 解雇に関する規制とは?
① 解雇予告
使用者は、労働者を解雇するには、少なくとも30日前に予告をするか、30日以上の平均賃金(※)(予告手当)を支払うことが必要です。

なお、予告日数は、1日分の平均賃金を支払った日数だけ短縮することができます。

ただし、例外が2つありますから注意してください。天災事変その他やむを得ない事由によって事業継続が不能になった場合、および、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合は、予告することなく即時に解雇ができるとされています。

なお、これら例外の場合は、行政官庁の認定を受けることが必要です。

(※)労基法にいう「平均賃金」とは、原則、直前3ヶ月間の賃金総額(臨時に支払われた賃金、3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)は含めない)をその期間の総日数で除することで算出します。


② 解雇ができない場合
労働者が業務上の負傷や疾病による療養のために休業する期間、およびその後30日間、ならびに、産前産後休業期間、およびその後30日間は解雇できません。

ただし、使用者が業務上の傷病について打切補償を支払った場合、または、天災事変その他やむを得ない事由により、事業の継続が不可能となった場合(行政官庁の認定が必要)には、解雇制限は適用されません。

その他、労基法、均等法、育児介護休業法などの法令で解雇が禁止されている場合があります。

③ 解雇権濫用法理
昭和50年(1975年)、最高裁は「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効となる」(日本食塩製造事件)と判示し、以来、解雇権濫用法理が確立されています。

現在では、この法理が労働契約法に規定されています。解雇が有効か無効かは、最終的には裁判で「客観的合理性」「社会的相当性」という2つの要件で判断されます。

④ やむを得ず解雇する前に
(ア) 就業規則
解雇事由があらかじめ就業規則に記載してあり、その条文に基づいて解雇することになります。

ただし、書いてあるから当然に解雇が有効となるものではありません。

(イ) 従業員側の事情~客観的に合理的な理由、社会通念上相当とは?
従業員の能力不足、協調性がない、やる気がない、うつ病になった、このような事情がある場合は、周囲への悪影響もあることから、会社に置いておくわけにはいかないので、できるだけ早く辞めてもらいたいと思うでしょう。

しかし、解雇はそう簡単ではありません。

裁判所は、勤務成績や勤務態度が不良という事由があるだけでは不十分で、著しく労働能力が劣り、かつ向上の見込みがないというような事情があってはじめて解雇が有効となる(セガ・エンタープライゼス事件)と判断しています。

現実的な対応としては、勤務成績不良者をいきなり解雇するのではなく、一定期間改善を求め、それでも改善が見られない場合は、配置転換などを検討し、次に退職を勧奨する(合意退職)方向で検討したほうが賢明でしょう。

イザというときに備えて、当該従業員に、どのような勤務上の不良があったのか、不良状態に対して、会社がどのように改善に向けて注意し、反省・努力を促したのか継続的に記録しておく、顛末書を残す、上長の報告書や指導書を残すなど、書面化(証拠化)しておくことが重要です。

(ウ)会社側の事情~整理解雇
典型例は、企業経営の悪化によって人員整理(リストラ)が必要になる場面でしょう。

いわゆる整理解雇は、従業員側に非がないため、解雇の有効性の判断は厳格に行われます。

裁判所では、人員整理の必要性があって、解雇を回避する努力を尽くしており、被解雇者の人選が相当で、従業員側との話し合いを十分尽くした場合にはじめて「解雇有効」というルールを決めています。

いわゆる整理解雇の4要件(または4要素)といいます。

 最近の事例では、会社更生手続き中の日本航空について、「Y社は、再三にわたる希望退職措置の方法で任意の退職者を募集し、一連の希望退職措置においては、一旦倒産状態に陥った更生会社であるにもかかわらず、退職金の割増支給を含む非常に手厚い退職条件を提示した上、併せて、その当時、採用可能な各種の解雇回避措置を実施する等、Y社が本件解雇に先立ち行った解雇回避措置は、いずれも合理的なものであり、総合して破格の内容のものであるということができるから、Y社は、本件解雇に当たって十分な解雇回努力を尽くしたものと認めるのが相当である」と、整理解雇が有効と判断されました。(平成24年3月30日)

セクハラ対策について

職場におけるセクシャルハラスメントを防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置について、厚生労働大臣が指針を定めています。

まずは、その指針をしっかり理解することから始めましょう。

(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
①職場におけるセクハラの内容・セクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

② セクハラの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

 例えば、社内報、パンフレット、ホームページ(イントラネット)などでセクハラに関する啓発記事を掲載する、研修や講習を実施することが考えられます。


(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
① 相談窓口をあらかじめ定めること。

② 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること。

(3)職場におけるセクハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
①事実関係を迅速かつ正確に確認すること。

② 事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置を適正に行うこと。

③ 再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)

(4)上記1から3までの措置と併せて講ずべき措置
①相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。

② 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

 職場における「セクハラ」は、均等法第11条で、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と規定されています。

 従業員に、「○○ちゃん、彼氏できた?」と声を懸けるような行為は、そのことが直ちにセクハラとなることはありませんが、相手や周りの従業員の抗議にも関わらず、しつこく繰り返した場合などはセクハラとなる場合があります。

また、セクハラは、「女性」に対する行為と思われがちですが、「男性」に対する行為も当然含まれますので、その点も注意が必要です。

パワハラ対策について

2012年3月15日、厚労省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」が職場でのパワーハラスメントの予防と解決に向けた提言をまとめました。提言ではパワハラを「職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為」と定義しています。

「上司から部下」に向けてだけでなく、「同僚間」や「部下から上司」に対するいじめや嫌がらせも含まれるとしています。また、典型的なパワハラを以下の6類型に整理しました。

 1)身体的な攻撃=暴行、傷害

 2)精神的な攻撃=脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言

 3)人間関係からの切り離し=隔離、仲間はずし、無視

 4)過大な要求=遂行不可能なことの強制、仕事の妨害

 5)過小な要求=能力や経験とかけ離れて程度の低い仕事を命じること、仕事を与えないこと

 6)個の侵害=私的なことへの過度な立ち入り

厚労省は、この提言をもとにパワハラに関するインターネットサイトの運営や企業の実態調査を進める方針です。

また、2012年4月以降、職場のパワーハラスメント問題を担当する専門相談員計47人を都市部の労働局を中心に配置することを明らかにしています。


(1)組織として予防策は?
①トップからメッセージ
パワハラは許さない、パワハラをさせないという経営トップからの明確な意思表示が重要です。社長訓示や、社内報などを通じて発信していくことで一定の予防効果があります。

②ルールを決めて周知をする
就業規則の服務規律や、別規程で明確なルールを決めて従業員に周知しましょう。

③従業員を教育する
入社時研修や昇格時の管理職研修など、研修の中でメニューとして設けて意識付けを行いましょう。


(2)もしも起こってしまったら?
 まずは、正確な情報を収集しましょう。

当事者本人からの事情を聴取することはもちろん、当事者の周りの従業員からも情報を集めて、事実を確認してから冷静な対応をします。「被害者」「加害者」を安易に決めつけることや思い込みは致命傷となります。

人格権にも及びかねないような微妙な問題ですので、予断を持たずに冷静に、会話重視で解決に向かうことが重要です。

社内で解決が困難と思われる時は、早めに外部に相談しておくのも早期解決の方法です。

残業対策について

(1) 労働時間制度が実態と合っているか
労基法にいう原則的な労働時間は、1週40時間、1日8時間とされ、時間配分の例外として、変形労働時間制度やフレックスタイム制度があります。

これらの制度は、使用者が労働時間の把握と算定ができることが前提となります。

一方、労働時間の把握と算定を行わずに、労働時間数を一定の時間数であるものとみなしてしまう「みなし労働時間制」があります。

みなし労働時間制には、事業場外労働みなし労働時間制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制の3つがあります。


 貴社の就業規則をみてください。

どのような労働時間制度を導入していますか?

業界によっても労働者の職種によっても様々な働き方があります。実態と制度があっているのかどうか。

まずは原点に立ち返って検討してください。内容によっては、制度を変更することによって残業代を減らすことが可能となる場合があります。

ぜひご相談ください。


(2) 労働時間にムダがないか
上司がいるから帰れない雰囲気はありませんか?

なんとなく習慣でダラダラ残業をしている従業員はいませんか?

貴社はいかがでしょうか?

残業は「あって当たり前」から、残業は「特別なこと」へ意識を転換しないと無駄な残業はなかなか減りません。

意識をするために、例えば、残業する場合は、その都度事前に理由を明らかにして申請させる方式に変えましょう。

上司が日々管理していくことで一定程度の無駄な残業を減らすことは可能です。 


(3) 残業申請制度への変更
上司が部下ひとりひとりの労働実態を知ることで業務の改善が進み生産性が向上します。

事前申請のポイントは申請内容をチェックして必要な場合のみ許可し、それ以外は明確に却下することです。

却下しても結果的に働いているとサービス残業に繋がりかねませんので、実際に働かせないように管理することが重要です。

部下の労働時間管理は上司の重要な仕事のひとつと心得て臨みましょう。


(4) 残業代のシミュレーション
労働時間をしっかり把握し残業代がいくらになるのか、いくらまでなら支払いに耐えられるのか、シミュレーションできていますか?

人件費の総枠から見込まれる残業代を想定して基本となる給与を設定することでコストの増加を抑えることも可能です。


(5) 定額残業支払い制の検討
一定時間の残業をあらかじめ見込んで、残業時間が少なくても一定分の「見込み残業手当」が払われるように制度を変更することも有効です。

ただし、実際の残業時間が見込み時間よりも長くなった場合は、別途差額の支払いをしないと未払いが発生しますのでご注意ください。

また、制度の変更によって実質的な賃下げとなりますので、実施前には従業員への説明と個別同意が必要です。

基本給が最低賃金を割り込んでいないかチェックもお忘れの無いように。

(6) 休憩時間の見直し
通常の休憩時間の他に別途休憩時間を加えることで残業時間を削減することができます。

一定の時間帯に人員が必要なサービス業や販売業で活用しやすい方法です。

休憩時間を追加することで同じ終業時刻で、残業を削減することができます。

残業代未払い対策について

企業が残業代の未払いを防ぐポイントを代表的なケースを取り上げて解説します。労務管理の中でも、残業管理はできているつもり、わかっているともりが多い項目ですのでここで確認してください。

(1) 労働時間の定義がわかっていること
労働時間の定義は労基法には書いてありませんが、判例では、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれていると客観的に評価できる時間」(三菱重工長崎造船所事件・最一小判平成12.3.9)とされます。

従って、例えば、始業時間は9時であるが、朝会が8時45分から開始され、朝会参加が義務となっている場合は労働時間と評価されます。作業前後の作業服や安全具の脱着時間もそれが事業所内で行うことが義務となっている場合は労働時間にあたります。

このほか、所定時間外(始業前、始業後、休憩時間など)に行われる社内研修会への参加、QC活動なども参加が義務で会社業務となっている場合(形式的には自由参加であっても実態が強制であると評価できるような場合も含む)なども労働時間にあたります。


 さらに、持ち帰り残業や自発的な残業であっても、使用者の黙認があった場合は労働時間として評価されますので注意が必要です。



(2) 自己申告した労働時間と実際の時間との間で乖離があるケース
労働時間の記録は、タイムカード、ICカードなど客観的な方法で行うことが原則です。自己申告制はあくまでも例外的な扱いであることをまず知ってください。

自己申告制を正しく運用するためには、労働者への十分な説明、実労働時間と合っているかの調査、適正な申告を疎外しないかの確認および改善する措置をとることが求められます。

 特に管理職には、労働時間管理の必要性・重要性とともに、労働時間となるのかならないのかの判断教育、仮にサービス残業をさせたことが明らかになった場合の懲戒処分について示すことが求められます。


(3) 残業時間に上限、下限を設定しているケース
例えば、上限設定とは、1ヶ月に30時間までは残業代を支払うがそれを超えた場合は支払わないような運用を指し、下限設定とは、残業時間が1ヶ月に30時間を超えたら残業代を支払うが、それ以下は支払わないような運用を指します。


(4) 固定残業制を導入しているケース
割増賃金の支払いに代えて一定額の手当を支払うことや、通常の賃金の中に含めて割増賃金を定額払いとすることは法的には許容されます。しかし、運用上はいくつか注意が必要です。

通常の労働時間に相当する部分と割増賃金に相当する部分とが明確に判別できること、割増賃金に当たる部分が法定計算額以上であることが導入の要件となります。


(5) 振替休日が未消化となったケース
振替休日とは、就業規則等により、休日を振り替えることがある旨を規定して、あらかじめ振り替える日を特定して休日を振り替えることを指します。

この場合は、休日労働には当たりませんので休日割増賃金の支払いは不要です。

しかし、振り替えた結果、1週間の労働時間数が40時間を変えた場合は、超えた時間は時間外労働となりますから割増賃金の支払いが必要となります。


(6) 年俸制を導入しているケース
年俸額に「見込み残業代等」が含まれているケースが多々見受けられます。

そのこと自体は許されますが、労働基準法にいう「管理監督者」でない場合は、日、週、月ごとの労働時間を管理把握し、所定労働時間を超えている部分や休日労働、深夜労働については別途割増賃金を支払う必要があります。

 注意するポイントは、割増賃金部分とそれ以外の本来の賃金部分が明確に区分できる賃金体系になっていること。

さらに、年俸額を例えば16で割って、12ヶ月分を定例賃金で支払い、残りの4ヶ月分を賞与で支払う場合であっても、業績によって変動しない賞与部分の額は割増賃金の算定の基礎となる賃金に含まれること等を確認してください。


(7) 管理職に対して一律的に残業代が支払われないケース
課長、部長といった役職と、時間外・休日労働に係る割増賃金の支払いを要さない「労基法上の管理監督者である管理職」は、ほとんどの場合異なります。ある外食チェーン店において、いわゆる「名ばかり管理職」問題として裁判で争われ、マスコミ等で大々的に報道されたことは記憶に新しいことです。

 裁判例では、労務管理上の使用者との一体性があること、労働時間管理を受けていないこと、基本給や手当が地位にふさわしい処遇であることなど。それらを総合的にみて「労基法上の管理監督者である管理職」を判断しています。

課長職等を一律的に残業代の支払いから除外することは問題が生じます。判断に迷ったらぜひ相談してください。


(8) 割増賃金の計算過程において端数処理が間違っているケース
毎日の労働時間は分単位で計算することが原則ですが、どうしても計算過程で端数が出ます。

原則的な考え方は、労働者が一方的に不利になるような端数処理(一律に端数を切り捨てることなど)は認められないことを確認してください。

許容される例として、「1ヶ月」における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、1時間単位の四捨五入(30分未満切り捨て、30分以上切り上げ)をすることがあります。

参考になさってください。

懲戒処分について

(1) 懲戒処分とは
「懲戒処分」とは、企業秩序に違反した労働者に対してする制裁罰をいいます。


(2) 懲戒処分を行うには
実務上、懲戒処分を行うには制約があります。

最高裁では、「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことが必要」(フジ興産事件・最判平成15.10.10)とされています。

また、懲戒権濫用について、労働契約法第15条は、「使用者が労働者を懲戒できる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」と定めています。

 懲戒処分を行うには、就業規則に懲戒事由として規定があることが大前提で、権利濫用にならないよう留意することです。

また、懲戒事由として規定・変更される以前になされた当該懲戒事由に該当する労働者の言動は、「不遡及の原則」から処分することができませんし、同じ事由について繰り返し懲戒処分を行うことも「一事不再理の原則」から禁止です。

さらに、懲戒処分を行うには、対象者に対して、懲戒事由を明らかにして、弁明の機会を与えるといった適正手続きを踏むことが必要です。

(3) 懲戒処分を巡る事例
① ホテル業においてアルバイト従業員が顧客の来訪者情報をツイッターでつぶやいた場合の懲戒処分
労働者は、信義則上、守秘義務を負っています。

ホテル業において顧客の宿泊情報などの秘密を守ることは、宿泊者のプライバシーや信頼関係の観点から、とりわけ重要な義務だと思われ、即刻懲戒処分をしたいところです。

しかし、懲戒処分をするには、アルバイト従業員の就業規則に懲戒の種別及び事由が規定されていなければなりません。

正社員就業規則に規定があっても、アルバイト従業員就業規則に規定がない場合、懲戒処分はできません。

そのような場合は、普通解雇や退職勧奨による合意退職を検討することになります。


② 通勤手当の不正受給者に対する懲戒処分
一般的に、労働者は労働契約等の通勤手当支給要件によって通勤手当の支給を受けることができます。

通常は、賃金規定等で、「会社が認める最短経路のうち、最も安価な経路」のように範囲が定められ、「経路に変更があった場合には、速やかに届け出なければならない」と規定していることが多いでしょう。

 労働者が自宅の転居により通勤手当に変更が生じたにも関わらず、その届出を故意に怠り、結果として通勤手当を不当に得ていた場合は懲戒の事由となるでしょう。

 約4年にわたって虚偽の住所を会社に届け出て、通勤手当の支給を受け、約231万円を不当利得していた事案で、裁判所は、懲戒解雇を有効(かどや製油事件・東京地判・平成11.11.30)としています。

 住所変更をしなかったことについて故意がある場合や、不正期間が長期で不正金額が高額なる場合は、背信性が高くなるので、懲戒処分も重くなると考えてよいでしょう。

もちろん、懲戒処分は、就業規則に規定があることが前提です。


③ 電車内痴漢で逮捕・拘留された従業員に対する懲戒処分
逮捕=有罪ではありません。有罪無罪は裁判で決定されます。

まずは、事実関係を明らかにすることが重要です。

痴漢が業務時間中に行われたのであれば何らかの懲戒処分はやむを得ません。

一方、痴漢が休暇中など業務時間外に行われた場合、従業員の逮捕・拘留がマスコミに会社名とともに記事となり、会社の社会的評価に傷がついた等の事情がなければ懲戒処分には慎重になるべきでしょう。

 特別な事情、例えば、痴漢の態様が悪質な場合、従業員が鉄道会社勤務であった場合、会社重役など会社の地位が高い者であった場合、会社の社会的評価が著しく低下した場合等は、懲戒解雇の検討も必要でしょう。


④ 社内不倫をした従業員に対する懲戒処分
婚姻関係にある者は配偶者に対しては貞操義務があります。

それに反した場合は民事上の責任を負うことになります。当然、社会倫理にも反する行為です。

しかし、いわゆる不倫行為が企業秩序を著しく乱すなどの事情が無い限り懲戒処分は困難と考えます。

もっとも、現実に周りの従業員に影響がある場合などは、配置転換をするなどの処置は必要でしょう。

企業規模が小さく配転ができない場合には、普通解雇や退職勧奨による合意退職を検討せざるを得ない場合もあるでしょう。


 社内不倫による懲戒解雇の有効例としては、観光バス会社においてドライバーと女性バスガイドとが長時間1台のバスに同乗して勤務するものであるから、企業の対外信用面からも、内部秩序の維持の面からも、ドライバーと女性バスガイドとの風紀は厳正に保たれなければならないとし、ドライバーについて懲戒解雇が有効と判断されました。(日本周遊観光バス事件・大阪地決昭和58.10.18)


 無効例としては、「素行不良で職場の風紀・秩序を乱した」という懲戒事由について、不倫関係は「素行不良」に該当するが、「職場の風紀・秩序を乱した」に該当するには企業運営に具体的な影響を与えるものに限られるとし、従業員の地位、職務内容、交際の態様、会社の規模、業務態様、等に照らして企業運営に具体的な影響は出ていないことから、女性事務員の行為は懲戒事由に該当しない(繁機工設備事件・旭川地判平成元.12.27)と判断されました。