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労務トラブルケーススタディ

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CASE1・募集のとき【採用条件の変更】
・募集のとき
求人広告に誇大な表記をしてトラブルになるケースがあります。例えば、新聞の求人欄に月給25万円と記載し、面接に来た応募者Aに、「実は試用期間3ヶ月あり、その間は月給23万円」と告げたB社。

高い交通費を使ってわざわざ面接に望んだAはどうにも納得できず、自宅に戻ってからネット掲示板に「求人広告はデタラメ。釣り広告を掲載したB社はブラック企業」と実社名入りで書き込みました。

 B社の人事担当者に悪意はありませんでした。面接で詳細を打ち合わせて給与を決定すればいいとの甘い考えで求人広告を掲載したことが、B社の信用を大きく傷つける結果になってしまいました。

求人広告が誇大であったか否かの評価は、受け手の側のAにあります。

 給与に関して誤解を生じさせるような説明をしたことを理由として慰謝料の支払いを命じた日新火災海上保険事件(東京高判平成12.4.19 )では、「求人広告をもって個別的な雇用契約の申込みの意思表示とはできず、また、面接・会社説明会において新卒同年次定期採用者の平均的格付による給与を支給するという合意が成立していたということもできない…、新卒同年次定期採用者の下限に位置づけることを明示せず、平均的給与を受けることができるものと信じかねない説明をしており、労働条件明示義務(労基法15条1項)に違反する」としました。

 募集時にも、誤解を招かない表現を心がけることが採用トラブルを防ぐ第一歩といえるでしょう。

採用担当者に会社がコンプライアンス研修を用意するなど、「何がリスクとなり得るのか」を知ってもらうことが重要でしょう。
CASE2・面接のとき信仰の自由】
・面接のとき
面接で何気なく聞いた一言が掲示板サイトで話題となり、火消しに右往左往したA社のケース。

人事一筋20年が自慢のA社B部長。日頃から上から目線の態度が目に付き社内でも評判はよろしくありません。

新卒の3次面接でつい話が横道にそれてしまって聞いてしまいました。

B部長「新聞は何を読んでいるの」応募者C「○○新聞です」B部長「へ~、○○新聞って結構左翼的だよね、キミもそんな思想を持っているの?」そこからB部長の説教が延々と始まり、採用は見送りとなりました。

 さて、何が問題だったのでしょうか?思想信条による採用差別をめぐっては有名な三菱樹脂事件大法廷判決があります。

「企業者が雇傭の自由を有し、思想、信条を理由として雇入れを拒んでもこれを目して違法とすることができない以上、企業者が、労働者の採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることも、これを法律上禁止された違法行為とすべき理由はない」(昭和48年12月12日判決)としました。

法的には違法ではないといえますが、一般論としてどうでしょうか。

各都道府県労働局は、「公正な採用選考のために」というパンフレット等で、思想・信条の調査などの就職差別につながるような質問をしてはならないという指導を行っています。

B部長のような質問は、法的に問題はないとしても控えられるべきであると考えられます。
CASE3・採用内定と内定取消し
・採用内定と内定取消し
内定に関して実務上問題となるのは、一旦内定を出した後に、急激な業績悪化などで取消さざるを得ない場合の対応でしょう。

2008年のリーマンショック後、多くの企業が業績悪化を理由に内定を取消したことから大きな社会問題となりました。

 A社では、新卒者20名に対して、翌年4月1日を入社日とする内定通知書を発送し、20名全員から承諾書を得ていました。

その後、急激な円高で輸出が激減し、生産調整を余儀なくされ、入社日直前の3月20日に内定者10名の内定取消しを決定し10名に通知したところ、内定者の両親、学校から取消しをしないよう申し入れがありトラブルとなってしまいました。

 内定の法的性格については、内定を労働契約の成立とする契約説が有力です。この説に因った場合、「内定取消しは就労の有無を問わず解雇に相当する」とされ、労基署もこの説の立場にたっています。

最高裁の判例では、採用内定の取消しは一旦成立した労働契約の解約であって、これが認められるのは、誓約書記載の具体事由も含めて、「採用内定当時知ることができず、また、知ることが期待できない事由であって、それを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である」(最判昭54.7.20大日本印刷事件)としました。

 さて、A社の事例では、急激な業績悪化が客観的合理的と認められるのか、社会通念上相当といえるのかが問題となります。企業側の都合による事由で内定を取り消す場合は、原則、整理解雇の要件を満たす必要があります。

判例上、整理解雇は4つの基準を満たすことが必要であるとされています。
①整理解雇の必要性があること 
②整理解雇回避のための努力を尽くしたこと 
③解雇の対象者選定について、客観的・合理的な基準を作成し、適正にこれを運用したこと  
④整理解雇を行うにあたり、対象労働者や労働組合と誠実かつ十分に協議を尽くしたこと


 少なくとも、A社には、内定取り消しを行う業務上の必要性があったこと、内定取り消しを回避する努力を十分行ったにもかかわらず他の手段がなく、やむを得ず内定取り消しを行ったとの要件を満たす必要があるでしょう。

「事業主の皆様へ~新規学校卒業者の採用内定取消し、入職時期繰下げ等の防止に向けて~ 」(厚生労働省)も参照ください。→http://www-bm.mhlw.go.jp/bunya/koyou/jakunensha07/dl/01b.pdf
CASE4・退職金の減額【労働条件の変更】
・退職金の減額
A社では、ここ数年退職金の支払いがかさみ、経営を大きく圧迫していました。

そこで経営会議で退職金の減額について規定変更の議論が始まりました。さて、実務上のポイントはどこにあるでしょうか。

 退職金は労働条件の中でも特に重要な権利ですから、仮にそのような事実があった場合でも、一方的に退職金規程を労働者に不利となるように変更することは許されません。

不利益を労働者に受け入れてもらうには、それなりの高度の必要性、合理性が求められます。では、どのような手続きを踏めば退職金の減額が可能となるのかを見ていきましょう。

 労働契約法は、これまでの判例法理(「秋北バス事件」最大判昭43.12.25、「第四銀行事件」最二判平9.2.28等)を踏まえて、原則として、就業規則の変更によっても、労働者の不利益に就業規則は変更できないことを確認し、例外として、就業規則を従業員に周知させ、次の①~⑤の事情に照らして合理的なものであるときに、不利益に変更された就業規則の内容は、個々の労働者の労働条件になると規定しました。
①労働者が受ける不利益の程度
②労働条件の変更の必要性
③変更後の就業規則の内容の相当性
④労働組合等との交渉の状況
⑤その他の就業規則の変更に係る事情


 さて、以上を踏まえてA社の事情を考えてみましょう。

①退職金が大幅に減額されるなど不利益の程度が大きい場合には合理性がないと判断される要素となります。

②A社の経営状態の悪化の原因が退職金支払いによるものであるといえる程度に大きな影響を及ぼしていたかどうか。その他の原因も精査した上で、なお退職金の減額変更が必要との結論に達したのであれば合理性があると判断される要素となります。

③変更後の就業規則の内容が、我が国社会の一般的状況(同業他社、世間水準)等と比較して相当性がない場合には、合理性がないと判断される要素になります。

④労働組合や従業員代表者との誠実な交渉(複数回、綿密に)がなされていない場合は、合理性がないと判断される要素になります。

⑤激変緩和措置などをとらずに、あまりに性急に減額した場合などは、合理性がないと判断される要素となります。

 以上の点について検討を加え、問題となりそうな場合は措置した上で、労働者と個別同意を取り付けて退職金規程を変更することになります。
CASE5・遅延損害金と付加金は恐ろしい存在【未払い残業代】
・遅延損害金と付加金は恐ろしい存在
A社はこれまで従業員に残業代を支払っていませんでした。

B従業員と退職に関してトラブルがあったため、Bは会社にいづらくなり会社を去りました。

その数ヵ月後、突然、Bから内容証明郵便が届き、過去2年分の残業代100万円の支払いを求めてきたのです。

A社ではもし訴えられたら残業代を払えば問題ないと考えていたようですが…

 さて、100万円の支払いでことは収まるのでしょうか?

会社が残業代を支払わなかった場合、あまり知られていないのですが実はペネルティーが科せられる場合があります。

それが付加金です。付加金は、残業代等を支払わない場合、労動者の請求により、裁判所が残業代と同一の金額の支払いを命ずることができるその金額のことを指します。

つまり、残業代が100万円であれば、付加金100万円で合計200万円支払えという判決が出ることがあるということです。

さらに、未払い残業代には未払いとなったときから年利6%の遅延損害金を請求することができます。さらに、Bが会社を退職した以降、賃金の支払の確保等に関する法律に基づき、年利14.6%の遅延損害金を請求することができます。

さらに、付加金にも、判決確定の日から年利5%の遅延損害金が加算されます。

場合によっては残業代の2.5倍~3倍くらいの請求額となることだってあるのです。

 付加金は、裁判所が使用者に悪質性が高い場合に最大2倍以内の範囲で支払い命令を出すものですから、必ず倍額というわけではありませんが、改めて付加金の恐ろしさも認識していただきたいと思います。
CASE6・店長に残業代は支払わなくていいのか【名ばかり店長】
・店長に残業代は支払わなくていいのか

あるファーストフード店で働いているA店長は少しばかりの店長手当が支給されるだけで何時間働いても残業代が一切支払われていませんでした。会社の説明では店長は管理職にあたるので法律上残業手当を支払わなくても問題ないとの回答ですが、これって、問題ないのでしょうか。

 法律上残業代の支払いをしなくてよい管理職のことを「管理監督者」といいます。管理監督者の要件は3つあります。
①出勤・退勤について時間の自由があること 
②職務について権限・責任があること 
③一般社員よりも優遇された給与を支払われていること
です。

 つまり、「いつ出勤して、いつ退勤するか、会社の管理を受けることなく自分で自由に決めることができる。

遅刻や早退しても給料を減らされることがない。

仕事に大きな権限と責任がある。

給料は一般社員より相当程度多くもらっている」ような条件
を満たした人であれば、法律上の「管理監督者」となりますが、そうでなければ、「管理監督者」とはなりません。

「管理監督者」でなければ当然残業代を支払う義務があるという結論になります。

 日本マクドナルド事件(東京地判平成20・1・28)は、メンバーのローテーションに穴があいた場合に自分でその穴を埋めるため過重労働をしていた店長について、経営との一体性も労働時間の裁量もなく、処遇も十分でないとして管理監督者性が否定された事件でした。判決では、日本マクドナルドに対して未払い残業代として約750万円(内、付加金約250万円)の支払いが命じられ、マスコミが大きく報道したこともあって、大きな社会問題となりました

 時間外労働や休日労働を命じた場合、使用者には割増賃金の支払いが義務となります。

その義務が免除される労働者はあくまでも例外中の例外であって、単に店長とか課長とかというような役職で一律的に例外が認められるものでは断じてありません。

そのことを肝に銘じて店長の処遇を考えないと大変なことになります。

付加金の存在も忘れてはならないでしょう。
CASE7・ライバル会社への転職
・ライバル会社への転職
昨年来よりライバル会社へ転職する例が増えたため、就業規則を変更したいA社。就業規則に「退職後2年間はライバル会社へ転職することを禁ずる。

違反者には退職金を支給しない。また、支給済みの退職金は全額返金させる」との規程を追加したいが問題ないか?

 就業規則を変更(追加)する場合は、不利益変更の有効・無効の観点から検討する必要があります

就業規則の変更の内容が従業員にとって不利益となるものであっても、変更の必要性があり、変更の内容が相当であれは最高裁判例(秋北バス事件、第四銀行事件など)では有効とされます。

就業規則に退職後の競業禁止規定を追加新設する場合、この最高裁の考え方に基づいて検討する必要があります。

 A社と同じような裁判例(「東京ゼネラル事件」平12.1.21東京地裁判決) がありますから紹介しておきましょう。

この事例は、支店長の立場であった従業員が満足な引継ぎをすることなく退職し、競業会社に転職したため、会社が就業規則(部課長らの退職後1年内の承諾なき競業を禁ずる)を根拠に減額支給したため、元支店長が退職金の残額を請求した、ものです。判決では、次の事由を根拠として就業規則は有効であると判断しました。

①競業制限を受ける従業員の範囲が限定されている
②競業制限期間が退職後1年間に限定している 
③被告会社の承諾があれば競業他社への就職も可能であった 
④退職金は常に不支給としていない 
⑤変更の必要性は、要職に就いていた従業員が大量に退職して競業他社に就職すれば、企業の存続にも重大な影響を及ぼしかねない 
⑥労働条件の改善については、特に功労金支給制度の新設をしている 
⑦変更手続きについては、他の多くの従業員は変更に同意していると認められる。


A社でも以上の7項目について検討を重ねていただくことが必要でしょう。
CASE8・雇止めと解雇予告
・雇止めと解雇予告
期間雇用者を大量に雇っている自動車メーカーA社が、期間雇用者Bを期間満了で雇止めしたところ、Bから解雇予告手当ての支払いを請求されました。支払う義務はあるのでしょうか?

 期間雇用者を期間満了によって契約を終了させた場合は、解雇ではないため、解雇予告制度(労基法20条1項)の適用はありません。

したがって解雇予告手当ての支払い義務は生じません。

期間雇用者であっても、例えば契約の途中で契約を解除すると、解雇に該当し、その場合は、原則として解雇予告手当ての支払いが義務となりますので注意が必要です。

 最近、期間雇用者から解雇予告手当ての支払い義務があるのでは?との相談が増えています。

おそらく、有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)の影響によるものと思われます。

同告示2条では、「使用者は、有期労働契約(雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。

次条第2項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。 」この告示では、解雇予告手当ての支払いには触れていませんし、告示レベルですから法的拘束力はありません。ただし、拘束力はないとしても尊重する必要はあろうかと思います。

 無用なトラブルを防ぐ観点からは、例えば、複数回契約が更新されれば自然と次回の更新への期待も高まりましょう。

更新の基準を都度示して、少なくとも30日前までには次回更新についての誠実な説明が求められます。

雇止めに関して、最近の裁判例の流れは、契約締結の状況、業務の種類・内容、期間の長さ、更新回数、雇止めの事情などを考慮して雇用継続の合理的期待が認められるような場合には、解雇が類推適用されるという一般的な枠組みが定着している(野川忍『新訂労働法』181頁)ので、雇止めの対応には慎重さが必要でしょう。
CASE9・パートタイマーの社会保険の加入
・パートタイマーの社会保険の加入
飲食店を展開するA社では大勢のパート従業員を雇用しています。毎月入社退社が多く、その度に手続きするのが手間なことと、パート従業員からも手取りが減るので加入したくないとの要望もあって加入させていません。最近、パートタイマーの加入が厳しくなると聞きましたが義務になるのでしょうか?


 厚生年金・健康保険の加入要件は、常用雇用者かどうかで決まります。具体的には、「1日または1週間の所定労働時間が、正社員のおおむね4分の3以上あり、かつ、1ヶ月の所定労働日数が正社員のおおむね4分の3以上」あるパートタイマーは厚生年金・健康保険の加入が義務となります。


 A社の場合も、この要件に当てはめて加入要件を満たすパートタイマーには加入手続きをとる必要があります。

手続きが煩雑であること、希望者が少ないことなど事情もわかりますが、早めに手続きを済ませてください。

なお、年金事務所の調査が入った場合、最大で2年前にさかのぼって加入手続きをとるよう指導されることがあります。

その場合、一度に大きな保険料が徴収されますのでご注意ください。


 パート従業員にとっても、メリットがあります。厚生年金は保険料の半分を会社が負担してくれますので、将来もらえる年金が国民年金に加入しているよりも断然大きくなります。

さらに、健康保険においても国民年金にないメリットがあります

例えば、私傷病で会社を休んだ場合、通常給料は保証されません。

その場合、最大1年6ヶ月間、毎月の給料の3分の2程度の所得保障
があります。

パートタイマー従業員に大きなメリットがあることを説明して早めの手続きをお願いします。

 現在、政府内ではパートタイマーなど非正規雇用者に対して保険の適用拡大を目指す検討が始まっています。

現在、雇用保険では週所定労働時間が20時間以上の場合、雇用保険の加入が義務になっています。

それにあわせて、厚生年金・健康保険の加入要件も週所定労働時間30時間以上を20時間以上にしようという流れです。

しかし、非正規雇用者を多く抱える業界団体が反対しているため、例えば、中小企業には猶予期間を置く、非正規労働者の年収基準を、例えば80万円以上とするなど、様々に配慮することも検討されているところです。
CASE10・試用期間中の解雇
(ア) 本採用を拒否できますか?

一定期間「試用期間」を設定して、その間に従業員の適正を判断した上で正式に採用するかどうか判断することが一般的でしょう。

試用期間中の労働契約について、最高裁(三菱樹脂事件・昭和48年)は、「解約権留保付の労働契約が成立しているとし、本採用を拒否することは留保された解約権が行使された(解雇)にあたるため、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として是認できる場合にのみ許される」と判断しています。

したがって、合理的な理由、社会的相当性がない場合は、解約権の濫用と評価され、無効となります。

例えば、遅刻や欠勤が多い場合や、能力・適性に欠けるといった理由がない場合は原則として本採用を拒否できません。


(イ) 本採用を拒否するときの注意点は?
訴訟になった場合、遅刻や欠勤が多い場合は出勤簿等から客観的に説明しやすいのですが、能力や適性といったものは曖昧でその立証は容易ではありません。

しかし、企業側は、能力や適格性が欠けている理由を具体的な根拠をもって示さなければなりませんので、例えば、求められる必要な能力や適性を目に見えるような形で目標として示すなどの工夫が必要でしょう。

もちろん、目標達成に向けてどのような指導したかも重要な要素となります。


(ロ) 試用期間を延長できますか?
試用期間は3ヶ月から6ヶ月程度が一般的です。

試用期間を延長することは労働者にとって不利なことですから原則的にはできません。

しかし、例えば、試用期間が終わりに近づいてきて、本採用を拒否できるような具体的な事由がある場合(能力不足など)に猶予的に試用期間を延長すること(雅叙園観光事件・昭和60年)は認められるでしょう。

試用期間を延長する可能性がある場合は、就業規則などであらかじめ、延長の可能性があること、その事由や期間を明記しておくことが必要です。
CASE11・ 経歴詐称と解雇
経歴には学歴、職歴、犯罪歴などがあります。

労働契約を締結する際にそれらを偽ったり隠したりした場合は経歴詐称に当たります。しかし、経歴詐称のすべてがすぐに解雇に結びつくのかと言えばそれは行き過ぎでしょう。

一般的に、その経歴が採否に決定的な影響を与えるような場合、つまり、真実の経歴が申告されていたならば、採用を見送ったというような社会的相当性があれば「重要な経歴詐称」として解雇有効と考えられます。

解雇が有効とされた例として、タクシー会社の採用面接において、過去にタクシー乗務員として稼働した事実をあえて履歴書の職歴に書かなかったことを理由とする懲戒解雇が有効とした事例(大阪地決昭62.2.13)、JAVA言語のプログラミング能力がほとんどなかったにもかかわらず、経歴書にその能力があるかのような記載をし、採用面接においても、同趣旨の説明をして、JAVA言語プログラマーとして採用されたことが「重要な経歴を偽り採用された」という就業規則の懲戒解雇事由に該当し、解雇予告除外認定なしの懲戒解雇が有効とされた例(東京地判平16.2.17)などがあります。

解雇が無効とされた例として、強盗、窃盗などの前科を秘匿したタクシー運転手の普通解雇について、すでに消滅した前科の存在が「労働力の評価に重大な影響を及ぼさざるを得ない」といった特段の事情が無い限り、労働者は使用者に対して、すでに刑の消滅を来した前科まで告知すべき信義則上の義務は負わないので、この場合、前科の不告知を理由に解雇することはできないとした事例(仙台地判昭60.9.19)などがあります。

また、学歴詐称については、実際よりも高く詐称する場合だけでなく、低く詐称する場合(例えば、大学中退歴を秘匿して高卒と申告)も懲戒事由になるとされます(東京高判昭56.11.25)。
CASE12・能力不足と解雇
能力不足で解雇したいという相談を多くいただきます。

普通解雇の場合も、「客観的合理的な理由」、「社会的相当性」が問われます。

あの人は仕事ができない、どうも適性がないのでは?といったことは多々あることです。

問題は、そのような状態が解雇しなければならない程度に重大な場合にあたるかという点です。

営業成績であれば数字で証明である程度客観性は証明しやすいですが、そうでない場合はやっかいです。

裁判所では、能力・適性が他の従業員と比較してどうなのか、具体的に詳細に事実を証明しなければなかなか認めてもらえません。

ある裁判例では、「単に成績不良いうだけでなく、それが企業経営に支障を生ずるなどして企業から排斥すべき程度に達していることを要する」(エース損害保険事件、東京地決平13.8.10)とされました。さらに、解雇に至るまでの会社の対応が問われます。例えば、機会を捉えて注意したか、能力不足を補うために研修を行ったか、他部署への異動は検討したかなど、業績改善のために具体的にどのような行動を取ってきたかが問題となります。会社として様々に支援・努力をしたがそれでも改善の兆しが見えなかったのかどうかがポイントです。

 人事考課が低い社員について就業規則の「労働能力が劣り、向上の見込みがないと認められたとき」に該当するとして解雇した裁判例では、「労働者が、従業員として平均的な水準に達しているとはいえないし、全従業員の中で下位10%未満の人事考課ではあるが、人事考課は、相対効果であって、絶対効果ではないことからすると、そのことから直ちに労働能能率が著しく劣り、向上の見込みがないとまでいうことはできず、会社としては、労働者に対し、さらに体系的な教育、指導を実施することによって、その労働能率の向上を図る余地もある」(セガ・エンタープライゼス事件、東京地決平11.10.5)とし、解雇無効としました。
CASE13・整理解雇
整理解雇とは、使用者が経営不振等の事情から従業員数を縮減する必要に迫られたという理由で一定数の労働者を余剰人員として解雇することをいいます。

法律上の規定にある用語ではなく普通解雇のひとつです。労働者側にまったく非がない解雇であることから、企業側に厳しい基準で判断がされます。

整理解雇が肯定される判断要素は、第一に、解雇時点において人員整理をする必要性があったこと、第二に、解雇を避ける努力を行ったこと。臨時社員の雇い止め、新規採用の停止、配転、出向、希望退職の募集などの具体的な行動が問われます。

第三に、被解雇者の選定に合理性があること。第四に、労働者側に対する説明・協議が尽くされたこと。

例えば、組合から団体交渉の申し入れがなくとも、使用者として積極的に協議の機会を設けなければなりません。

これらを総合的に考慮してその有効性が判断されます。